大判例

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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)11376号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二昭和五二年四月二三日、被告がした焚火が原因で失火し、本件家屋が焼失するに至つたことは当事者間に争いがない。

<証拠>を総合すると、右失火に至る状況は次のとおりであつたと認めることができる。即ち、被告は前同日午前一〇時頃から本件家屋と被告方家屋の間にある空地の一角で不用となつたダンボール箱類の焼却を始めたが、その焚火の場所の周囲近距離のところに堆肥小舎(出火個所との距離1.35メートル)、自動車の車庫(同じく約三メートル)、物置(同じく5.1メートル)、被告方母屋(同じく2.3メートル)等があつて、もともと焚火をするには危険性が大きく、不適当な場所であつた。しかし、被告は、当時風がほとんど吹いていなかつたこと等から危険はないものと判断し、念のため水を入れたバケツを準備したうえ焼却作業を実施し、同日午前一一時頃これを完了した。ところが、焼棄したはずのダンボール箱は実は完全に燃えつきておらず、まだ火が残つていたところ、同日午前一一時四〇分頃、折から強い風が吹き始めたのに煽られて、燃え残つていた火が前記物置に飛び移り、たまたま付近にはむしろ等の燃え易い物が置かれていたこともあつて、まず右物置が火を発し、次いで隣接の車庫、本件家屋等に燃え移り、遂に本件家屋は全焼するに至つた。なお当日は空気が乾燥しており、前橋地方気象台から異常乾燥注意法が出されていた。

以上の認定事実から考察すれば、先ず前記のように周囲を建物で囲まれた狭い場所で焚火をした被告の所為はそれ自体危険が大きいといわなければならないばかりでなく、ダンボールのように軽くて風に飛ばされ易い物を燃やすのであるから、焼却を終えたのち十分に注水を行うなどして、完全に火が消えるのを確認すべきであつたというべきである。しかるに被告はこれらの注意義務を怠り、漫然と火は消えたものと考えて現場を去つたため、燃え残りの火が周囲の建物に飛び移つて本件火災を招来したのであつて、その過失の程度、態様から考えるに、被告には重過失があつたと解するのが相当である。 (南新吾)

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